イノベーションとMOT(技術経営)とは?わかりやすく解説

ストラテジ系 ・ 経営戦略 ・ 読む目安9分

技術を利益につなげる経営(MOT)と、新しい技術や製品が事業になり世の中に広まるまでの壁を学びます。

最初に考えてみよう

すごい技術を発明しても、それだけで会社が儲かるとは限りません。新しい製品が売れて世の中に広まるまでに、どんな壁が待っているのでしょうか?

解説

すごい技術を発明しても、それだけでは利益になりません。技術を事業の成果につなげる経営がMOT(技術経営)。その途中に待っている壁と、新しい製品が広まるときの法則を見ていきます。

1MOT と2種類のイノベーション

MOT(Management of Technology:技術経営)

どの技術に投資し、どう製品にして、どう稼ぐかまでを考える経営。研究開発だけで終わらせない。技術経営の責任者はCTO(最高技術責任者)。

イノベーション(革新)は、何が新しくなるかで2つに分けます。

プロダクト
イノベーション
新しい「製品」

例:電話・音楽・カメラを1台にしたスマートフォンが登場した

プロセス
イノベーション
新しい「作り方」

例:組立をロボットで自動化し、同じ製品を半分のコストで作れるようにした

2研究から成功までの3つの壁

壁の名前は川 → 谷 → 海と、先へ進むほど大きくなると覚えます。

研究
新しい原理を見つける
魔の川
研究の成果が製品づくりに進めない
開発
製品として作れる形にする
死の谷
製品はできたが、資金や体制が足りず売り出せない
事業化
量産して売り出す
ダーウィンの海
売り出したが、ライバルとの競争で生き残れない
産業化
競争に勝ち、利益を出し続ける

3イノベーター理論とキャズム

新製品を買う人を、買うのが早い順に5つのグループに分けます(左ほど早い)。

キャズム(深い溝)↘イノベーター2.5%アーリーアダプター13.5%アーリーマジョリティ34%レイトマジョリティ34%ラガード16%
溝の左:新しさに価値を感じて、多少不便でも試す人たち
溝の右:みんなが使って安心できるなら買う、慎重な多数派

買う理由がまったく違うので、ここで普及が止まりやすい。この溝を越えられるかが、新製品が大きく広まるかの分かれ目です。

4イノベーションのジレンマ

業界トップの優良企業ほど、新技術に負けてしまうことがある ― その理由をグラフで見ます。

性能時間 →多くの顧客が求める性能大企業の既存技術既存顧客のために改良を続ける新技術安い・最初は低性能ここで市場を奪われる
  1. 1. 大企業は大切な既存顧客の要望に応え、性能を上げ続ける(やがて性能が過剰に)
  2. 2. 性能の低い新技術は「うちの顧客は欲しがらない」と後回しにされる
  3. 3. 新技術が「十分な性能」に届くと、安さや手軽さで一気に市場を奪う

※ 正しい経営判断を続けた結果として負けるので「ジレンマ(板ばさみ)」と呼びます。

5ハイプサイクル ― 期待の山と谷

新技術への世の中の期待は、一度ふくらみすぎてしぼみ、そのあと実力に見合った形で落ち着きます。

期待時間 →黎明期「過度な期待」のピーク期幻滅期啓発期生産性の安定期

「話題になっている技術がいまどの段階か」を見て、導入の時期を判断するのに使います。

6試験ではここを見分ける

  • MOT=技術を製品・サービスや利益につなげる経営の考え方。責任者はCTO
  • プロダクトイノベーション=新しい製品/プロセスイノベーション=新しい作り方・進め方
  • 研究→開発=魔の川、開発→事業化=死の谷、事業化→産業化=ダーウィンの海
  • キャズム=アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間の溝
  • イノベーションのジレンマ=優良企業が既存顧客を大切にするあまり新技術に負ける
よくある取り違え

誤り:3つの壁の順番は 死の谷→魔の川→ダーウィンの海

正しくは:川(研究の出口)→谷(開発の出口)→海(事業化の後)の順

誤り:キャズムはイノベーターとアーリーアダプターの間

正しくは:アーリーアダプター(約16%まで)とアーリーマジョリティの間

誤り:プロセスイノベーション=新製品を出すこと

正しくは:新製品はプロダクト。プロセスは作り方・業務の進め方の革新

試験のポイント

ITパスポート試験での問われ方

MOTの意味、プロダクト/プロセスイノベーションの区別、3つの壁の順番、イノベーター理論とキャズム、イノベーションのジレンマ、ハイプサイクルが問われる

間違えやすいポイント

  • 魔の川・死の谷・ダーウィンの海の順番を入れ替える
  • キャズムをイノベーターとアーリーアダプターの間だと思う
  • プロセスイノベーションを新製品の開発だと思う

関連用語

MOT、CTO、プロダクトイノベーション、プロセスイノベーション、魔の川、死の谷、ダーウィンの海、イノベーター理論、キャズム、イノベーションのジレンマ、ハイプサイクル

図解の内容を文章で読む

イノベーションとMOT(技術経営)をイメージでつかむ

MOT(技術経営)は、技術を製品・サービスや利益につなげるための経営の考え方です。イノベーションには、新しい製品を生み出すプロダクトイノベーションと、作り方や仕事の進め方を変えるプロセスイノベーションがあります。研究から事業の成功までには魔の川・死の谷・ダーウィンの海という3つの壁があり、新製品が広まるときにはキャズムという溝を越えられるかが鍵になります。

たとえると:新しいお菓子を思いついても、工場で作れる形にし(開発)、店に並べて売り(事業化)、ライバル商品との競争に勝ち、流行に敏感な一部の人だけでなく大勢が買うようになるまでには、いくつもの関門があるイメージです。

MOT(Management of Technology:技術経営)は、技術を製品・サービスや利益につなげることを目的にした経営の考え方です。研究開発に投資するだけでなく、どの技術をどう事業にするかまでを経営として考えます。技術戦略の策定や研究開発の推進といった技術経営に直接の責任をもつ役員がCTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)です。イノベーションは大きく2つに分かれ、新しい製品やサービスそのものを生み出すのがプロダクトイノベーション、製造方法や業務の進め方を変えて品質や効率を高めるのがプロセスイノベーションです。研究開発の成果が事業として成功するまでには3つの壁があります。研究の成果が製品開発に進めない壁が魔の川、開発した製品を事業化できない(資金や体制がそろわず売り出せない)壁が死の谷、事業化しても市場の競争で生き残れない壁がダーウィンの海です。製品の普及については、イノベーター理論が消費者をイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードの5つに分け、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある越えにくい溝をキャズムと呼びます。イノベーションのジレンマは、優良な大企業が既存顧客の求める改良を続けるうちに、最初は性能が低く安価な新技術を軽視し、後から市場を奪われる現象です。ハイプサイクルは、新技術への期待が過度に高まり、幻滅を経て、実用的に定着していくまでの推移を表した図で、黎明期→「過度な期待」のピーク期→幻滅期(期待した成果が出ず関心が急に薄れる)→啓発期(使いどころが理解され始める)→生産性の安定期(実用として定着する)の5段階に分けます。

押さえどころ

  • MOT=技術を事業の成果(利益)につなげる経営。責任者はCTO(最高技術責任者)
  • プロダクトイノベーション=新しい製品、プロセスイノベーション=新しい作り方
  • 研究→開発の壁=魔の川、開発→事業化の壁=死の谷、事業化→産業化の壁=ダーウィンの海
  • キャズム=アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間の溝
  • イノベーションのジレンマ=優良企業が既存顧客を重視するあまり新技術に市場を奪われる

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